「今この瞬間」に集中する方法
世界でイチバン「今」を生きる国
世界で最も「今ここ」を楽しんでいる人たちをご存知でしょうか?
過去4回の世界幸福度調査で1位になった、フィジー人です。世界65か国(64000人)を対象とした米ギャラップ社の調査(2014)によると、フィジー国民の93%が「幸せを実感している」という結果で1位。最下位はイラクで31%でした。
先進国でみると、1位フィンランド(80%)、2位デンマーク(76%)、3位アイスランド(73%)です。多くの幸福度調査で上位を独占している北欧諸国を、南の島国フィジーが上回っています。ちなみに日本は幸福度58%、全体で39位、先進国の中では30位。残念ながら、下から数えた方が早い順位です。
↑「あなたは幸せを実感していますか?」という主観調査で、北欧諸国を抜いて幸福度調査で1位になった南国フィジー
実際、フィジーは貧しい途上国です。主な産業は観光とサトウキビ、働いていない人も多く、平均月給は約3万円。炭水化物が多すぎる食生活で肥満大国、糖尿病が大きな社会問題になっていて、平均寿命も短いです。
しかし、彼らは底抜けに明るく、幸福を感じています。
その背景には、フィジー人の「今」を大切するという文化があります。
やりたいことは「今」やる。
やりたくないことはずっとやらない。
その口実としてフィジー人は「Life is short」という言葉をよく使います。(1)
人生にタイムリミットがあることは誰もが知っていますが、日常生活で私たちがそれを意識することはほとんどありません。しかしフィジー人は「人生は有限」ということを意識レベルにおき、躊躇なく「今」という瞬間にフォーカスしています。
↑フィジー人は底抜けに明るく、やりたいことは「今」やる。
国税庁の調査(2015年)によれば、日本の平均月収は約35万円。フィジーの物価は日本の1/3程度なので、フィジーでいうと平均月収12万円くらいです。つまり、フィジー人の4倍も手元にお金があるにも関わらず、幸福を感じている人の比率はフィジーよりも40%も少ないという状態です。
さらに、世界保健機関WHOによる世界の自殺率を調査したレポート(2014)では、日本の自殺率は世界ワースト6位、特に女性はワースト3位。政府がまとめた自殺対策白書(2014)においては、15~39歳の死因1位が「自殺」であったことが公表されています。
自殺率のワースト諸国は、1位リトアニア、2位 韓国、3位スリナム、4位スロベニア、5位ハンガリーとなっていますが、ワースト1位~6位までの6ヶ国のうち、5ヶ国を先進国が占めており(※)、これは、経済的な豊かさと幸福度は関係がないことを示しています。
※日本の内閣府が発表している「世界経済の潮流」では、先進国にスロベニア・リトアニアを含めてカウントしている
↑経済的に豊かであるにも関わらず、世界で6番目に自殺率が高い国、日本。
経済的に貧しいけれど心が豊かなフィジーと、経済的に豊かだけれど心が貧しい日本。イソップ寓話の「アリとキリギリス」では、この違いをわかりやすく表しています。
アリたちは、夏の暑い時期に一生懸命はたらいて冬に備えます。
キリギリスは、暑い日中は昼寝、夕方になるとバイオリンを弾きます。
アリは将来のために現在を犠牲にしてはたらき、キリギリスは今を生きているわけです。
一生懸命働くのは素晴らしいことですが、「いつか来る幸せな未来」や「老後」のためだけに働くと、それは今を犠牲にしているのと同じことになってしまいます。
今を犠牲にしてはたらいた結果、寓話の教訓のとおり、幸せな未来がみんなに訪れれば良いのですが、実態はその逆で、自殺率は世界ワースト6位、幸福度も下位…と、人生に幸せを感じる人が少なくなってしまっているわけです。
↑いつか来る(?)幸せな未来のために今を犠牲にするアリと、今を生きるキリギリス
将来の幸せとは、「今が幸せだ」と思うことの積み重ね
脳科学者である茂木健一郎さんは、「アリのように働きながらも、キリギリスのように今にフォーカスする生き方」を推奨した上で、次のように述べています。
「“今ここ”の幸せを感じられない人は、将来においても心の平穏を手に入れることは難しいでしょう。将来の幸せとは“今が幸せ”ということの積み重ねです。焦って理想の自分を追及しようとしても、ろくな結果は生みません。“今ここ”を楽しむことができて、初めて物事はうまくいきます」
「今が幸せだと感じる人と、そうでない人の違いは、“こうでなければならない”という思い込みから自由になっているかどうかです。」
「“こうでなければならない”から自由になっている人は、シンプルなものの中に幸せを感じることができるので、いつも幸せな気分でいられます。どんな状況に置かれても楽しそうにしている人は、自分だけでなく、周囲の人をも幸せにすることができるのです。」
↑「こうでなければならない」に縛られなければ、今ある幸せを見つけることができる
アップル創始者のスティーブ・ジョブズは、スタンフォード大学の卒業祝賀会スピーチにて、「今を大切にすることが将来につながる」ことについて、次のように述べました。
「“来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そうすればいずれ必ず、間違いなくその通りになる日がくるだろう” 私が17歳の時に出会ったこの言葉は、私に強烈な印象を与えました」
「それから現在に至るまで33年間、私は毎朝鏡を見て自分にこう問いかけるのを日課としてきました。“もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定は本当にやりたいだろうか?” その答えが “NO” の日が何日も続くと、そろそろ何かを変える必要があるなと、そう悟るわけです」
↑未来のために生きるのではなく、今日が人生最後の日だと思って生きる
ミニマリストを広めた2人の若者【感動的な物語】
ミニマリストという言葉は、日本では2015年頃からブームになりましが、実は、2011年頃からアメリカで広まり、4年ほど遅れて日本に入ってきたものです。
しかし、日本で語られているミニマリストと、本場アメリカのミニマストは、実態がかなり違います。あなたが日本でメディアに取り上げられるミニマリストを見た時、「なんか元気なくね?」と思ったことはありませんか?本場のミニマリストはその逆で、エネルギーに満ち溢れ、人を惹きつけ、2000万人以上に影響を与え、多くの人の人生を暗闇から太陽の元へ解放してきました。
↑ミニマリストブームの火付け役は情熱に溢れ、多くの人の人生を暗闇から太陽の元へ解放してきた。
ミニマリストブームの火付け役となったのは、ライアン・ニコデマス(Ryan Nicodemus)と ジョシュア・フィールズ・ミルバーン(Joshua Fields Millburn)という2人の若者。ライアンはアメリカの大手通信会社シンシナティ・ベルで働き、年収1000万円の暮らしをしていましたが、親友ジョシュアの影響で、仕事を辞めてミニマリスト生活を始めました。なぜ、彼は裕福な暮らしを捨ててミニマリストになったのでしょうか?
【ライアン】20代で年収1000万なのにうつ病に…
↑ライアン・ニコデマス(sparefoot.)
ライアンは、ミニマリストを始める前の生活を次のように述べています。
「20代後半の私は1000万円以上を稼ぎ、欲しいものは何でも手に入れていました。数年に一回は高級車を乗り換え、ベッドルームが3つ、リビングが2つもあるマンションも持っていました。でも全然幸せな気はしませんでした。それでもいつか幸せになれると信じて、たくさん稼ぎ、たくさんモノを買いました。しかし、モノを買えば買うほど、私は幸せから遠ざかっていきました。鬱状態が何年も続きました。」
「そこで人生で大切なものについて考えました。私は、自分の健康も恋愛も情熱についてすら、ほとんど考えたことがないことに気がつきました。私のやってきたことは、他の人の役に立ってもいなければ、成長もしていません。私の人生には目的や生きる意味、情熱が欠けていました。」
【ジョシュア】母親と妻を同時に失う…
↑ジョシュア・フィールズ・ミルバーン(joshuafieldsmillburn.)
ライアンがメンタルをやられている頃、20年来の親友であるジョシュアに大きな出来事が起きました。
当時、ライアンと同じシンシナティ・ベルに勤めていたジョシュアは、27歳にして最年少の取締役に就任し、年収1000万円以上、豪邸を購入して贅沢な生活をしていました。ただ彼もライアンと同じように、幸せを追い求めて大量消費に走り、5000万円を超える借金を抱えながら贅沢な暮らしを維持していました。
そして2009年、母親を失い、同じ月に、最愛の妻までも離婚で失うことになります。
母親の遺品整理を通じてジョシュアは偶然、人生とって本当に重要なものだけ所有する生き方、ミニマリズムを発見します。彼はミニマリズムに出会った時のことを「それは夜の暗闇の中で光る灯台のようだった」と表現しています。(公式サイトThe Minimalistより)
【ジョシュア】すべて手放してみたところ…
8ヶ月かけて、ジョシュアは持ち物のほとんどを手放します。家を売りに出し、オハイオ州にある小さなアパートで生活を始めました。彼が持ち物を手放すにつれて、彼はより自由で、より幸せに、軽くなるのを感じ始めました。環境の雑音(モノ)が取り除かれたことで、内面の雑音(感情的な混乱、精神的な混乱、ストレス、不安)も取り除かれたのです。
さらに、簡素な食事と1日18分の運動は、当時太っていた彼の体重を30kg減らし、ジョシュアの身体をスリムに変身させました。
そんな時でした。辛い出来事が重なったにも関わらず、充実感をただよわせるジョシュアを見て不思議に思ったライアンは、彼をランチに誘い、こう尋ねました。
一体、お前はなんでそんなに幸せそうなんだ?
↑「Why the hell are you so happy?」(一体、お前はなんでそんなに幸せそうなんだ?)
ライアンには信じられませんでした。人生でいちばん辛い出来事が2回も立て続けに起きたのに、なぜそんなに幸せそうなのか。ちょっと前まで自分と同じように鬱々としていたのに…
ジョシュアは20分かけてミニマリズムについて語りました。数か月もの間、物事をシンプルにすることにフォーカスし続けたこと。本当に必要なものを迎え入れる為に邪魔なものを整理したこと。そしてジョシュアは、ミニマリストとして生きる人々をライアンに紹介しました。(You tube)
↑4ヶ月ごとに行ったことのない国へ所有物すべてを携帯して旅に出る起業家のミニマリスト
↑36歳で二児の父のミニマリスト
↑10代の娘を持つ40代主婦のミニマリスト
↑サンフランシスコで6歳の息子を育てるパパ(38歳)ミニマリスト
彼らはそれぞれ違う人生を歩んでいるように見えて、共通点があることにライアンは気づきました。彼らは目的を持って意味のある人生を送り、情熱を持って生きていたのです。ライアンには、大企業で見てきたどんな「リッチな人」よりも、彼らのほうが豊かな人生を送っているように感じられました。
ライアンの決意は固まりました。
「オーケー!やってみるよ。ミニマリストになってやる!」
すぐに結果が欲しかったライアンは、ジョシュアと一緒に自宅で‟Packing Party“(荷造りパーティ)を決行することにしたのです。
↑「Packing Party」(荷造りパーティ)とは?(Ben Hoyt)
持っているものの80%はムダだった
二人はまるで引っ越しの時のように、ライアンが所有するすべてのモノをダンボール箱に詰めていきました。服、キッチン用品、タオル、テレビ、電子機器、家具…。
9時間以上かけてすべての梱包が終わったとき、ライアンの家は一気にがらんとしました。10年もの間、幸せになるために手に入れてきたものが「すべて」箱詰めされたのです。
「21日間、必要なものだけを箱から出して使う」
これが、Packing Partyのルールでした。翌日から21日間、ライアンは必要なものだけを箱から取り出しながら生活しました。
21日後…箱詰めしたモノの80%は開けられることなく、そこにただ置かれていました。
幸せを感じる為にモノを買いつづけ、入手し続けたブランド品・洋服・家電・家具・便利用品は、結局ライアンを幸せにすることなく、ただそこにあっただけでした。
↑持っているものの80%は無駄で、ただそこにあるだけだった(You Yube)
人が「有意義な人生を送る」支援をしたい
ライアンは80%の使わなかったものをすべて処分して、2010年にミニマリストとしての生活を始め、自分にとって必要なものを発見した彼は、ついに豊かさを感じられるようになりました。当時30歳だったライアンは会社を退職し、ジョシュアとともに、「心から情熱を注げること」をやり始めます。
2人はウェブサイト‟the minimalists“を立ち上げ、彼らのミニマリストとしての経験や実録を投稿していきました。人が「有意義な人生を生きる」支援をしたい――。それが彼らが最も心から情熱を注げることでした。
初月に52人だったサイト訪問者は、500人、5000人と瞬く間に増えていき、2014年には年間200万人、現在では年間400万人以上にのぼります。
これまでに、ニューヨークタイムズ、ウォールストリートジャーナル、フォーブス、タイム、ABC、BBC、CBCからも取材を受け、2000万人を超える人たちに影響を与えています。
↑2000万人を超える人たちに影響を与える「the minimalists」
「物を持たずに暮らしましょう」という単純な話ではない
2人のミニマリズムは、アメリカで瞬く間に広まりましたが、これだけ多くの共感を呼んだのには理由があります。それこそが、日本で一般的に語られるミニマリズムと2人のミニマリズムの違いです。
ライアンとジョシュアは、「the minimalists」で、ミニマリズムとは何か?について、次のように述べています。
「一見すると、人々はミニマリズムのことを、物質的な所有物を手放すことだけだと考えるかもしれません。しかしそれは間違いです。確かに、余分なモノを取り除くことはレシピの重要な部分ですが、それは単なる1つの要素にすぎません。世間がそのことだけに関心を持っているなら、大切なポイントを見逃しています。」
「ミニマリズムは、持ち物をより少なくしていくことに集中するのではなく、むしろ、より多くの情熱、より多くの経験、より多くの成長、より多くの時間、より多くの貢献、より多くの満足を受け入れるためのスペースを創り出すことにフォーカスします。日々の生活の中で感じる混乱を取り除くことで、私たちは大事なことに集中するスペースを得ることができます。」
↑混乱を取り除くことで大事なことに集中するスペースを得ることができる
「ミニマリズムは自由を見つけるのを助けるツールです。恐怖からの自由。心配からの自由。罪悪感からの自由。うつ病からの自由。私たちの生活ルールを作り上げた消費者文化の飾りからの自由。」
「ミニマリズムは、過去や未来ではなく、今この瞬間を生きることに集中します。それは、単に少ないモノで生活することを提案するものではありません。しかし、ミニマリズムをそれぞれが異なった方法で受け入れたとしても、それぞれの道のりは同じ場所につながります。それは、より有意義な人生を送る自由がある生き方です。」
↑ミニマリズムは自由を見つけるためのツール。やり方は人それぞれでいい。(the minimalists.com)
健康、人間関係、情熱、成長、貢献…有意義な人生を送るために必要な“5つの価値”
彼らがフォーカスした人生で最も重要なこととは、健康、情熱、人間関係、貢献、成長、という5つの価値です。The minimalistsでは、それぞれを深く掘り下げて語られています。(以下抜粋)
■情熱
あなたの人生は情熱的ですか?何に熱中していますか?これらはあなたにとって重要な質問です。これらの質問は、あなたの幸福と満足と個人の成長に密接に関連しています。
■人間関係
自分と近しい価値観や信念を持った人と一緒に過ごすことで、喜びや感動を共有し、分かち合うことができます。そういった価値のある交流は、人生をより意味のあるものにし、生きがいを創出します。
■健康
健康は目的地ではありません。目的地へ向かうための乗り物です。毎日のストレッチ、定期的な運動、健康的な食事、十分な睡眠、瞑想をすることで、人生という旅をより楽しむことができます。
■貢献
自分自身を超えて人に貢献することは、私たちがモノを買うことで得ることができない充実感をもたらします。私たちが本当に生きていると感じるためには、私たちは貢献しなければなりません。価値観を共有でき、喜びを分かち合えるコミュニティを形成し、そのコミュニティの人々に貢献することです。
■成長
リンゴは木の上にある時、成長しています。あなたが市場(いちば)でリンゴを見るとき、それはよく熟して理想の状態に見えますが、実際はもう成長せず、腐っていくだけです。もしあなたが成長していなければ、木からもぎとられたリンゴのように、死んでいるのと同じです。あなたが生きていると感じるには、成長しなければなりません。
あなたの人生にとって大切なものを発見できる、たったひとつの質問
ミニマリズムは、自分の人生に価値をもたらしてくれるものを発見するのに役立つライフスタイルです。人生の道から雑音を取り除くことで、私たちは人生の最も重要な側面、つまり健康、人間関係、情熱、成長、貢献のためのスペースを作ることができます。
始めるのは、自分自身に1つの質問をするだけです。
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